ADVENT CALENDAR 2019
あぺりらのかわいいサンタさん
ep.1 「サンタさんのおてつだい」





クリスマスが間近に迫った12月の夜、
ツリーの下で眠る猫の女の子がいました。
名前はあぺりら。

おいしいごはんを食べて、ツリーのオーナメントにじゃれて遊んで。
大満足で寝ていた時、窓辺からコツコツと音がします。

「風かな、雪かな」

そう思って目を開けると、
窓の外には大きな太い枝が。
枝先が窓ガラスにあたって、コツコツと音を立てています。








「あんなところに木があったかなぁ」

と思った矢先、枝は動いて、
なんとその下から大きな顔が現れました。
枝と思ったのは大きな角で、
トナカイが窓の外からのぞいていたのです。

「こんばんは、あぺりらさん」

はじめてみる大きな生き物に、
あぺりらはびっくり。
目はまんまる、耳はぺったんこ、 背中としっぽの毛はタワシみたいにふくらんで、
飛び上がってしまいました。

「夜分遅くにすみません。
驚かせてしまいましたね」

ちょっと申し訳なさそうに言いながら、トナカイが窓を鼻先で押すと、
不思議なことに鍵がかかっているはずの窓はすぅっと開いたのでした。

突然のことに、あぺりらはおっかなびっくりです。








目をぱちくりさせていると、あぺりらに声をかける姿がもうひとつ。

「やあやあお嬢さん、今日はクリスマスの夜だよ。
驚くことはない、クリスマスは不思議で素晴らしいことが起きる夜さ。
おっと僕たちは誰かって?
聞いたことないかなぁ、トナカイと、サンタクロースだよ!」

赤い帽子をかぶった大きな猫が、
トナカイの背中をゆうゆうと歩き、角の先に乗って名乗ったのでした。

「あのすみません、角に乗るのはやめてくれませんか…」

トナカイはちょっと迷惑そうです。







「さんたくろーすっていうのは、人間のおじいさんだったよ。
テレビでみたもの」

あぺりらはカーテンにくるまりながら警戒しつつ言いました。

「ああ、それは人間のためのサンタクロースだろう。
猫には猫の、犬には犬の、鳥には鳥のサンタがいるのさ。
僕は猫のサンタクロースなんだ。

でもね、猫のサンタってのは骨が折れるんだよ!
なにせ家が決まってない猫はたくさんいるからね。
一晩で全員を回ってプレゼントを置いていこうなんて
ただでさえ正気の沙汰じゃないのに、
ましてやどこにいるかわからないなんて、
本当にやってられない!」

猫のサンタクロースはちょっといらいらしながら爪をとぎます。

「ああもう角で爪とがないでくださいって何度も言ってるでしょう!」

「なんか思ってたサンタさんとちがうんだけど…
ほんとうにサンタさんなの…?」





「それでここからが本題!
お嬢さんには猫たちにプレゼントを配るのを手伝って欲しいんだ!」

「ええ〜!?あたち!?」

「毎年地区の中でお手伝い係を決めるのさ。
自治会の当番みたいなものだから、がんばってね」

「でもどこにだれがいるかなんて知らないよ」

「大丈夫、お嬢さんの担当はたった5匹だから!
クリスマスまでに探し出せると思うよ。
はいはい、このリストをあげるからね、これを参考にさがしてね〜。
みんなサンタクロースが来てくれるのを今か今かと待ってるよ!」

「で、でも、プレゼントを配るんでしょ?
たくさん持ちながら歩けないよ…」

「そうだねぇ、小さなお手伝い係さんに、
プレゼントをしょって歩けなんて酷なことは言わないよ。
だからプレゼントの代わりに、
なんでも一つお願い事を叶える魔法を猫たちに教えてあげて欲しいんだ。
その魔法はね、ごにょごにょ…」



サンタクロースはそう言うと、魔法の手順をあぺりらに耳打ちしました。
あぺりらはそれを聞いて半信半疑です。

「そんなのでほんとにお願いがかなうの?」

「疑ってる?それなら今ここでやってみるといいよ!
もちろん君にもプレゼントをもらう資格があるからね。
さあ、お願いを心の中で唱えながら、手順を間違えないようにやってみて!」








あぺりらは教えられた魔法の手順を半信半疑でやってみました。

左手で2回顔を洗って






右手で2回顔を洗って






背中を3回舐めて






お腹を2回舐めて






左手の爪を噛んで






おもいっきりのばして






しっぽで地面を3回たたく








するとどうでしょう、
あぺりらの目の前に、ぽんとオルゴールがでてきたのでした。


「すごーい!!本当にお願いしたオルゴールがでてきた!!」

あぺりらは一度テレビで見た
音楽と共に人形がくるくる回るオルゴールがずっと気になっていたのでした。

「ふふ、やっと信じてくれたね。
それじゃあこの魔法を、リストの猫たちに教えてあげてね、頼んだよ。
あっそうそう、サンタクロースお手伝い係の証をあげないとね」








サンタクロースはあぺりらの頭に小さな赤い帽子をかぶせました。

「うん、頼もしいお手伝い係さんだね。
ああいけない、早く行かなきゃ間に合わない!
こんな寒い日本当はこたつで寝ていたいんだけどね。
サンタってのは本当に猫の性分を無視した仕事だよ。
まあクリスマスシーズン以外はずっとゴロゴロしていられるからいいんだけどね。
それじゃあね!」

「あぺりらさんよろしくお願いします…ってもう!
角にかじりつかないで!かつおぶしじゃないって何度言ったら…」


大騒ぎをしながら、サンタクロースとトナカイは空を駆けて去っていきました。


「サンタさんのお手伝い係になっちゃった。
ふふ、にゃんだかおもしろそう」



サンタクロースお手伝い係になったあぺりら、
お仕事のはじまりです。




ep.2につづく








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